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ジョン・アシュワースさんに「LINKSOUL」の哲学を聞く

肩まで伸びたシルバーヘアを後ろで束ね、黒いTシャツにジーンズというラフな姿で、ジョン・アシュワースさんは茅ヶ崎に現れた。1987年に「アシュワース」を立ち上げて、ゴルフ界におしゃれとカッコよさをもたらした人物は、2012年に家族や友人たちとカリフォルニア州オーシャンサイドに「LINKSOUL」(リンクソウル)を設立。同時期に本社近くの公営ゴルフ場を都市開発から守る活動を推進し、ゴートヒルパークとして存続させ、今ではゴルフに限らない交流の場として、地域の人々に欠かせない存在となっている。

GDO代表の石坂信也も何度かゴートヒルパークを訪れているが、アシュワースさんとゆっくり話す機会はなかったという。今回の対談は、飛行機でアシュワースさんの隣にたまたま乗り合わせたGDO社員が、GDOや茅ヶ崎での活動について話したところ「日本に行ったらぜひ立ち寄ってみたい」と興味を示してくれて実現した“縁”である。4月某日、2人はGDO茅ヶ崎ゴルフリンクスのクラブハウスで膝を突き合わせて語り合った。

茅ヶ崎を訪れたジョン・アシュワースさん

アシュワース: ここはすごく良い場所だね。少なくとも、必要な全ての要素がそろっている。ゴルフに適した美しい土地、雰囲気あるクラブハウス、すぐ近くに海があること。ゴルフにサーフィン、ドッグランやヨガもできる。コミュニティが必要とするものは、娯楽とレクリエーション、社交や適度な運動、つまり健康的で幸せなライフスタイルだからね。

石坂: 個人的に話をさせてもらうのは今回が初めてなので、僕が聞き知るところでは…という質問ですが、ゴートヒルパークをゴルファーだけでなく、存続を願う全ての人たちを巻き込んで復活させようという発想は、もともとどこから来たのですか?

アシュワース: 僕はその地域で8、9歳の頃にゴルフを始めて、ジュニア大会にも出たりしたけど、かつてプレーしたコースが1つ、また1つと消えていたんだ。それは経済的な理由だったり、水不足の問題だったり、欲深い開発のためだったりしたのだけど、緑の芝生だった場所が突然なくなっていった。その頃、僕はカールスバッドに住み、オーシャンサイドでLINKSOULを立ち上げて、当時はセンターシティゴルフコースと呼ばれていたゴートヒルパークでゴルフをしていた。農学(芝生学)の学位を取得して、ゴルフ場設計にも興味を持っていたので、いつもプレーしながら「ここを変えたらもっと良くなる」と心の中で考えていた。そして、ゴルフを誰の手にも届くものにすることを夢見ていた。多くの出来事が同時期に重なったんだ。ゴートヒルパークは「ゴルフはどうあることができるか?」という実験場みたいなもの。これだけ広い屋外スペースは、たくさんのことに活用できるからね。

GDO茅ヶ崎ゴルフリンクスで対談する二人

石坂: 僕がGDO茅ヶ崎ゴルフリンクスを始めるときに1つだけ明確にしたことは、運営が一個人や一企業によってなされないようにするということ。ゴートヒルパークのように、地元や周辺地域と協力して、支援してもらえるようにしたかった。それが、ゴートヒルパークに関する記事を読んで最も参考にしたことです。

アシュワース: まず始めに、経済的にサステナブルでなければいけないので、そのためのビジネスモデルを見つけること。コース整備や照明、設備を維持しないといけないからね。それから、僕たちは常に「ゴルフ界のスイスである」という立場を取ってきた。キャロウェイだろうと、タイトリストだろうと、テーラーメイドだろうと、一緒にやりたい人は誰も仲間外れにしない。おかしなことだけど、ゴルフメーカーが集まるカールスバッドに住んでいると、違う会社の人たちとは「企業秘密」とか言って、お互いにシェアしたり、仲良くやったりしないんだ。だけど、ゴートヒルパークは誰もが快適に過ごせる場所。違う会社の人たちが同組でプレーしても何も心配する必要がない。ライバルと交流できるなんてクールだと思わないかい? 僕はゴルフをより多くの人々に広めることを使命のように感じていて、それがゴートヒルパークを始めた理由でもある。なぜなら、ゴルフは人類がより良く生きるための素晴らしいゲームだというのが信念だからね。

GDO茅ヶ崎ゴルフリンクスに隣接した施設を視察するアシュワースさん

1997年、「アシュワース」は米国ナンバー1のゴルフブランド(ダレルサーベイ調査)に上り詰めた。マーケットシェアは10%を超え、30歳以下の人々にとって最も有名なゴルフブランドであり、米国のベストプレーヤー(ハンデ0から5)の25%が「アシュワース」を着用していた。だが、同時期にアシュワースさんは「哲学の違い」という理由で会社を去り、いくつかのプロジェクトを経て、2012年に新ブランド「LINKSOUL」を設立した。

アシュワース: 「アシュワース」を立ち上げたのは26、7歳のとき。それまでずっとゴルフをしてきたけど、周囲には自分がゴルフをしているとは言わなかったよ(笑)。僕が育った南カリフォルニアはサーフカルチャーが主流で、彼らのファッションはゴルファーより断然カッコよかったんだ。僕がプレーしていた大学のユニフォームなんてひどかった…。ゴルフファッションが若者に「ゴルフはダサい」というイメージを与えていると思ったから、「アシュワース」を始めたんだ。

石坂: 僕はあなたより少し若いけど、90年代前半まではウェアもギアもすべて米国製のものがカッコよかったですね。日本企業も90年代に少しずつ大きくなり始めたけど、80年代はまだドルも高く、日本ではタイトリストやテーラーメイド、アシュワースといったブランドは限られた場所でしか取り扱っていなくて、簡単には手に入りませんでした。

アシュワース: 当時は株式公開していて会社も非常に大きくなり、少し燃え尽きていたのかもしれない。インスピレーションを得るためにスコットランドに行くようになって、そこである土地を見つけたんだ。ホーム・オブ・ジ・オナラブル・カンパニー(ミュアフィールド)の隣にあって、もともとは1800年頃に造られた2つのゴルフ場の跡地だった。ここにゴルフ場を復活させて、アシュワースの国際本部を置けないかって考えた。役員たちは僕の気が狂ったと思ったんじゃないかな。それがまあ1つの“哲学の違い”ってやつだね。ちなみに僕が開発許可を取ったその土地には2008年にルネサンスクラブができ、今では「スコティッシュオープン」が行われているよ。

もう1つの理由は、会社に外部から人材を招いたら、僕があまり同意できない変更を次々にしていったこと。例えば、品質を落としてコストを下げて、利益を増やすとか。たぶん、それが最も大きいだろうね。当時は37、38歳だったけど、朝、目が覚めても全然ワクワクしなかったんだ。それが何日も何日も続いたから、何かを変えなくちゃいけないと決意した。簡単な決断じゃなかったけど、後悔はしていないよ。そうじゃなかったら、今こうしてここには座っていないだろうね。

これから、どんな道を歩んでいくのか?

石坂: 新しく立ち上げた「LINKSOUL」はあなたにとってどんな意味があるのですか? そして、このブランドの最終目標は何ですか?

アシュワース: 良い質問だね。立ち上げてから10年になるけれど、絶えず進化し続けているよ。簡単なビジネスじゃなく、うまくいっているけれど常にチャレンジング。堅実に成長したいし、僕は良い製品を作ることが好きなんだ。上質な生地と優しい色合いのカラーパレットを使い、機能的で快適な服。朝起きて仕事に行き、ゴルフをして、終わったら飲みにも行ける。その間に何度も着替える必要がなく、どんな場面にも適応できるカッコいい服を作っているんだ。僕は“ファッション”というより“スタイル”を意識していて、それは「何を着るか?」ではなく「どう着るか?」ということ。その“スタイル”に自信を持つことが大切だと思う。

あまり先の計画を立てることは好きじゃなくて、1日1日を大切に過ごしている。それは、玉ねぎの皮を1枚ずつむいていくようなものかな。継続的な学びの過程だし、本当に瞑想そのものだよ。ゴルフは人を狂わせるほどの可能性を持っていて、それ自体が人生の象徴のように感じるね。

石坂: ブランド名はどうやって思いついたのですか?

アシュワース: ある本にこんな一文があったんだ。「Golf is what links the soul to the flesh.(ゴルフは魂と肉体を結ぶものである)」。とてもクールだなと思った。僕はスコットランドのリンクスコースを愛しているし、自分のことをとてもスピリチュアルな人間だと思っている。ゴルフは人の魂をつなぐ力を持っていると感じるんだ。4人の見知らぬ人たちが一緒にゴルフをしたら、途中でいろんなアップダウンを経験して、1日が終わる頃にはお互いをよく知って一生の友達になることもある。僕はゴルフのそんな一面が大好きなんだ。

「ゴルフを通じて人生を豊かにしたい」というビジョンが重なる

LINKSOULのホームページにはこう書かれている。「LINKSOULはブランドというより哲学です。アパレル会社というよりも経験です。LINKSOULはお互いを尊敬し、コラボレーションを楽しむ人々による人生の積み重ねです。私たちは価値ある製品を、家族や地域のために、愛する人々と共に創造することを信念としています」

自分を「スピリチュアルな人間だと思う」と語ったアシュワースさんは、ナイーブな理想を掲げることも躊躇(ちゅうちょ)しない。かつてジョン・レノンが「夢を見ていると言われるかもしれないけど、僕一人じゃない。いつか君も仲間になってくれれば…」とイマジンを歌ったように。

2023年7月、GDOは「LINKSOUL」の取り扱いを開始した。それは単に彼らのゴルフウェアを売るためではなく、彼らの理念にGDOと多くの共通点を見つけたからだ。「ゴルフを通じて人生を豊かにしたい」、「ゴルフをもっと多くの人々に届けたい」という哲学を、より広く世の中で表現すること。それこそが、私たちがアシュワースさんと共に達成したい使命である。

<了>

「LINKSOUL」の商品一覧(GDOショップ)

写真・角田慎太郎 文・今岡涼太

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