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ゴルフ場を地域交流の架け橋に ナイトピクニックが抱く夢

澄んだ夜空に中秋の名月が浮かんだその夜を回想するとき、思い出すのは親しい人々の顔である。ふいに名前を呼ばれて振り返ると、コロナ禍で会わなくなった仕事仲間や、足を伸ばせずにいた遠方の友人が微笑んでいる。小さな子どもを連れた同僚が父親や母親の表情を見せ、そろいのTシャツを着た社員スタッフが手際良く役割をこなしている。そんな断片が、GDO茅ヶ崎ゴルフリンクスで9月10日に行われた「ナイトピクニック」のごく私的な記憶である。

2020年、茅ヶ崎の夏の風物詩である浜降祭(はまおりさい)中止が契機となって始まった「ナイトピクニック」は今年で3年目を迎えた。“密”になる祭りは開催できなくても、広いゴルフ場なら何かできることがあるのではないか? 地域に開かれたゴルフ場を目指す過程において、それは新たな挑戦だった。

夕暮れのマジックアワー

今年用意されたコンテンツは、ナイトゴルフとフットゴルフ、グラスYOGAに星空鑑賞、星空グラスウォーキング、SDGsを意識したランタンワークショップ、古着ペイントアート、ミニビーチコーミングなど。隣接するオーシャンビレッジでは、サンセットデパートと銘打ったナイトマーケットが催され、向かいのドッグランも盛況である。

投光器に照らされたフェアウェイは整備されたキャンプ場のような趣。いつもは一人予約でゴルフプレーに訪れる年配の男性が、息子夫婦と孫を連れてのんびりと過ごしている。「久しぶりにママ友に会いました」と松林の下で旧交を温めている人々がいる。3月に実施した小学校の卒業イベントに参加した児童の両親と妹が「初めてゴルフ場に入りました」とうれしそうに顔を見合い、そのイベントで世話役だった校長や教諭もプライベートで訪れてなごやかな表情に包まれている。

多くの客で賑わうサンセットデパート

来場者は年々増えて、今年は671人に達した。フットゴルフをやるためにゴルフ場にサッカーボールを抱えてくる少年たち。そんな姿もいつの間にか違和感がなくなっている。ペットボトルと古布を再利用したランタンワークショップを主催していたのは、普段は音楽とアートを融合させた作品を作っているという女子学生二人組のアートユニットだ。ゴルフ場がゴルフという枠を超え、少しずつ多様な人々の交流の場になっていることを実感する。

「ナイトピクニック」から一夜明け、スタッフ用のグループチャットには早々に「今から言っておきますが、もちろん来年もやります」という責任者のメッセージが書き込まれた。このイベントがどう育っていくかは時間の証明を待つしかない。そこにどんな精神が宿るのかも未知数だ。そうだとしても継続は力である。またあの顔に会うために、来年もこの場所に戻ってこよう。

<了>

(2021年)幻想的な夜のゴルフ場へようこそ~ナイトピクニック in GDO茅ヶ崎ゴルフリンクス~

フットゴルフも浸透してきてます!
ボール型照明なんだけど、子どもたちにとっては完全におもちゃ(汗)
日が沈むとボールもドームも光るんです
グラスYOGA これは実に気持ちが良さそう!
サンセットデパートで見つけた美味しそうなパンたち
ローカルビールも多数
手作りランタン 下にスマートフォンなどを置いて光らせます
きれいな満月が顔を出した

写真・文 今岡涼太

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