story 2022.03.24 小学生から新成人まで 人がつなぐゴルフ場の“サステナビリティ” サステナビリティ 小学生 ゴルフ場の有効活用 フットゴルフ 茅ヶ崎海岸の沖合約1.4kmにある“えぼし岩”は、波に洗われ少しずつ輪郭を変えている。だが、そのかすかな変化が気にならないほど、人間界の移ろいは速く、激しい。ここ10年で何度かゴルフ場存続の危機に陥った旧茅ヶ崎ゴルフ倶楽部(現GDO茅ヶ崎ゴルフリンクス)も例外ではなく、変化の荒波はすぐそこまで押し寄せている。今回は近ごろ同コースで実施した2つのイベントを通して、「サステナブル(=持続可能)なゴルフ場」というテーマについて考えてみたい。住宅と海に囲まれたGDO茅ヶ崎ゴルフリンクスまずは、2月26日の「新成人ゴルフ体験サポートイベント」から。これは、茅ヶ崎市の新成人で構成される「成人のつどい実行委員会」が発案した“エボシパス”という取り組みに賛同したことがきっかけで実現した。“エボシパス”を地域の賛同店で提示すると、なんらかの特典を得られる(*GDO茅ヶ崎ゴルフリンクスではプレー代1000円引き)という仕組み。成人のつどい実行委員の川崎智洋くんは、「僕たちがお世話になった地元に少しでも還元したいと思った」と、地域経済活性化への思いが根底にあることを教えてくれた。せっかくならば「新成人に気軽にゴルフ体験してもらおう!」と企画したのが本イベントだ。当日、参加したのは男子1人、女子4人の新成人。それぞれに1人ずつマンツーマンでサポート役のゴルフ経験者が付いてコースをプレーした。女子4人は全員、この日がコースデビューだったものの「初心者はもっとできない印象だったけど、当たったら楽しいし、気軽にできるんだなと思った!」と、サポートの甲斐もあって不安なく楽しんでくれた様子だった。サポーターとして、プロキャディの伊能恵子さん(後ろ姿)も応援に駆けつけた。初めてのゴルフ場だけど、この笑顔!イベント視察に訪れた茅ヶ崎市選出の桝(ます)晴太郎・神奈川県議会議員は、“エボシパス”に「自分たちのことだけじゃなく、街のことも考えていてすごくいい。単発ではもったいないので、次の代にも引き継いでもらいたい」と期待を寄せる。そして「仕事が始まる前にゴルフをしたり、サーフィンをしたりする。茅ヶ崎には、これからの若い世代の働き方にマッチした魅力があるので、それをうまく活用した街にしていきたい」と、自身が思い描く茅ケ崎の青写真を眼前の光景に重ね合わせた。神奈川県議会の桝晴太郎議員(右)と参加した新成人たちで記念撮影その一週間後の3月3、4、7、8日の4日間は、茅ヶ崎市内にある4つの小学校から総勢約590人の6年生を招待した「卒業記念スペシャルデイズ」を開催した。昨年、隣接する浜須賀小から「コロナ禍で修学旅行などの学校行事がなくなってしまった」という相談を受けて実施した卒業イベントが好評で、今年はなんと市内4校から届いた協力依頼に応えたものだ。昼以降は一般ゴルファーのプレー予約を止めて、小学生のためにゴルフ場を貸し切りにし、広くて安全な芝生の上で、パターやアプローチ、フットゴルフ体験、人文字づくりや風船飛ばしといったアウトドアのアトラクションで遊んでもらった。浜須賀小の児童たちにとってさえも、「学校からは木しか見えない」という未知の場所。初めて足を踏み入れたゴルフ場に「めっちゃ広くて、迫力がすごい!」と目を輝かせ、パッティングやアプローチのチーム対抗戦に歓声を上げる。校庭の何倍もある芝生の上で思う存分にサッカーボールを蹴って走り回る姿を見ていると、サポート役として参集したGDO社員たちの気持ちまでなんだか幸せになってくる。フットゴルフ体験では、元Jリーガーの阿部敏之さんも指導に訪れてくれたみんなで集まっているだけで楽しそう長引くコロナ禍で、小学生たちは多くの制約の中で日常を過ごしている。浜須賀小では、全員が同時に校庭に出ると密になってしまうため、中休みと昼休みは全校を2つに分けて順番に遊んでいるという。感染防止の観点から、接触のある鬼ごっこやバスケットボールは禁止され、給食は一人ずつ前を向いて黙食を続けている現実もある。開会式で、同校の松永忠弘校長は「コロナが勝てないもの、それは『つながり』です」と、児童たちに語って聞かせた。目に見えるつながりが断たれても、気持ちのつながりは断ち切れない。このイベントだって地域のつながりで誕生した。こんな時代だからこそ「つながりの温かさ」を、子供も大人も、より実感できているのだろう。お土産はなにかな~日が暮れて、ゴルフウェアブランド「アドミラル」のエコバッグに入ったお土産を手に、児童たちは名残惜しそうに振り返りながら家路についた。「ゴルフってすごく難しいゲームかなと思っていたけど、簡単にできたから『家族でも行ってみようよ!』って伝えたいです」、「将来、友達や家族とゴルフをしたいなって思いました」と話してくれた児童がいた。後日それぞれの小学校から、児童たちの感謝メッセージも届けられた。DO茅ヶ崎ゴルフリンクスは、周囲を住宅地に囲まれた都市型ゴルフ場で、広域避難場所という側面も持っている。かつて「ゴルフ場を潰して商業施設にする」という計画が浮上したが、近隣住民の反対によって頓挫したこともある。ゴルフ場がサステナブルであるということは、単に温室効果ガスを削減したり、生物種の多様性を担保したりすればいいという話ではない。その地域に受け入れられ、共存し、継続的に訪れてくれる人がいなければ、持続できない。世代をつなぐ地域の取り組みにはいつだって積極的でありたいと思う。イベント後、各小学校から届けられたメッセージたち夢を乗せて飛ばした風船たち浜須賀小を卒業した児童たちは、多くがすぐそばの浜須賀中へと進学する。通学時、松永校長は昨年のイベントを経験した中学生によく会うという。「そんなとき、子供たちと『あのときは楽しかったね』とか話すんです。残念だけど修学旅行に行けなかった世代。中学生になっても、もっと成長して大人になっても、あのゴルフ場での体験はずっと覚えているだろうなって思いますね――」。彼らが新成人になり、“エボシパス”を手に再びこのゴルフ場を訪れる日が来たならば……。その先はちょっと言葉にできそうもない。<了>小学校4校が合同で作成した人文字 写真・角田慎太郎、文(写真一部)・今岡涼太 この記事をシェアする 一覧に戻る 関連ストーリー Related Stories FC今治が乗る”海賊船” 針路は「心の豊かさ」へ サステナビリティ 2023.10.02 児童が短くなった鉛筆を集めて寄贈 教育とゴルフ場の出会い サステナビリティ 2023.03.31 【石坂信也のゴルフ未来日記 Vol.6】企業として向き合う「SDGs」 GDOが目指す姿とは? サステナビリティ 2022.02.16 茅ヶ崎市とゴルフ場がタッグを組んだ地方創生イノベーション ーー GDO茅ヶ崎ゴルフリンクスで実施した夏休みの親子イベント サステナビリティ 2021.09.24 一覧はこちら