ゴルフ菜園プロジェクト

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58ゴルフクラブのいま

2017.09.28


日本には現在約2,300ほどのゴルフ場が存在する。ゴルフ人口減少に伴い、あえなく閉鎖してしまうゴルフ場も多くなっており、2016年3月をもって閉場した「ファイブエイトゴルフクラブ」もその一つで、東日本大震災によるコースへのダメージ、原発の風評被害も重なり、コースクローズという苦渋の決断となった。オーナーである小森寿久氏は、「何とかして従業員の雇用を守らなくては」と考え、コースは太陽光発電施設へ、クラブハウス周りは「マルシェ」や「農園」を展開して“食とエネルギーの自給自足”を掲げた。従業員はもとより、みんながwin-winとなるような取り組みを次々と手がける小森氏。先日開催された、「58  LOHAS MARCHE(ファイブエイト ロハスマルシェ)」の模様と合わせて現「58ロハスクラブ」の今をお伝えする

Text & Photo by Yusuke Hirokane


58(ファイブエイト)ロハスマルシェ

 

栃木県矢板市にある「58ロハスクラブ(旧58ゴルフクラブ)」で行われる「58 ロハスマルシェ」(マルシェとはフランス語で市場という意)は、“手作り”と“地産地消”をコンセプトに、地域の人々との交流と地域活性化を目指し、健康と環境に配慮した持続可能なライフスタイルを推奨するイベントとして開催されている。この日は113店舗が出店、約4000名の来場を記録。正直その人数の多さに驚いたと同時に、ファミリー、カップル、おじいさんと孫、犬連れなどなど、老若男女で溢れかえっていたのが大変印象的だった。

 

コースへの入場口には車が列をなし、警備のスタッフさんも大忙し。昨年の7月に第1回目を開催したこのマルシェは、回を重ねるごとに出店社も来場者も増加。今回は出店希望の70店舗を泣く泣くお断りしたとのことで、その人気ぶりが伺える。次回は11/5(日)開催で、来年からは月1回のペースで都度テーマを変えながらやっていくそうだ。

 

「グリーンヘリテージ」=「緑の遺跡」。ここがゴルフ場だったということを忘れないでほしい、との願いが込められている

 

クラブハウス前には多くの「ハンドメイド」、「無農薬」をウリにした多ジャンルのお店が並ぶ

 

前回から始まったという野外ライブでは、アマチュアバンドの生演奏につい足を止めて聞き入ってしまう

 

食とエネルギーの自給自足

 

ゴルフ場運営時から無農薬野菜やイチゴを栽培して、レストランで提供していた同クラブ。冬場のゴルフ場閑散期に、キャディさんや従業員に仕事を作るという目的もあり、農業をスタートさせた経緯がある。今でもコース内の一部、もともとはナセリ(芝生の養生用地)があった場所で、トマトをはじめ、ナスやベビーリーフなどといった農作物を栽培している。

 

また、閉鎖したコース内の木々は伐採して、材質の良いものはログハウス等の建設用に、それ以外は薪に変えて風呂の湯沸かし用の熱に変えて活用。電気についても、ソーラーパネルで発電した電力量に余裕で収まる範囲内で施設の稼働が管理されている。一切の無駄を出さず、かつエネルギー循環型のシステムとなっているのだ。

 

元はナセリだった土地にはナスやベビーリーフが栽培されている

 

虫に食われた葉っぱが無農薬の証。土も有機肥料を混ぜて豊かな土壌を形成している

 

ゴルフコースにあった時は、プレーヤーを苦しめた木々は薪に姿を変えて、貴重なエネルギー源として再利用されている。ガシファイアーというバイオマスボイラーは、チップにしないで薪をそのまま入れるだけで燃焼、エネルギーに変えてくれる画期的な機材だ

 

施設の稼働で使われる電力は、消費ピーク、無駄を作らないように管理されている

 

カーボンオフセットという取り組み

 

このように非常に合理的かつ、地球に優しい循環システムで食物とエネルギーが自給自足で賄われている同クラブだが、その活動はこれだけに収まらない。続いては「カーボンオフセット」というなんだか聞き慣れない言葉。いや、待てよ……。

 

「ゴルフ菜園プロジェクト」で行なっているカロリーオフセットという言葉がある。これは先進国の肥満(過食)をヘルシーな食事で抑えて、途上国の(飢餓、食不足)をオフセットするというプログラム。そう、カーボンオフセットも同様のスキームで、地球規模でその削減が求められている二酸化炭素(C02)のオフセットプログラムのことなのだ。

 

施設の自助努力で抑えられた二酸化炭素排出量を国がクレジット化(J-クレジット制度)。同クラブは二酸化炭素を年間約100トンの削減、エネルギー削減率100%を達成して同制度の第一号認証を受けた。1人あたりの日常生活で排出される二酸化炭素量は1日あたり約6.1キロだそうで、今回のマルシェに来場されたお客さんの排出した二酸化炭素量も、このクレジットを使ってオフセット。二酸化炭素排出量ゼロのエコなイベントとして成立している。

 

カーボンオフセットの取り組み、その活動内容や環境配慮の考え方がPRされている

 

今後の展望について

 

株式会社 グリーンヘリテージ代表取締役社長で「58ロハスクラブ」を運営する小森寿久氏に聞いた。

 

「日本のゴルフコースの多くが厳しい経営環境に置かれていると思います。我々は残念ながらゴルフ場経営という側面は失いましたが、そういったゴルフ場を有効に活用することはできると感じています。我々の事例をみていただき、少しでも多くのゴルフコースで、こういった取り組みや機運が拡がれば嬉しいですね。これからの時代は“持続可能(サスティナビリティ)”という考え方が大事になってくると思う」

 

地球にも人にも、無理なく、持続可能な取り組みやビジネススキームが必要となってくる。また、近々REDD+(レッドプラス:途上国の森林減少・劣化に由来するCO2排出の削減に加えて、森林炭素ストックの保全及び、持続可能な森林経営並びに森林炭素のストックの向上、を追加した概念のこと)に民間企業として参画することが決定。要するに、途上国で未だに行われている焼畑農業は、本来二酸化炭素を吸収してくれるはずの森林が失くなり、かつ焼くことでさらにダブルで二酸化炭素が排出されている。

 

それに歯止めをかけるべく、先進国の農業技術を持ち込み、森林を失うことなく、効率的な農業生産方法を用いて、二酸化炭素排出量を削減しようというものだ。「58ロハスクラブ」は長年培われたイチゴの栽培技術を、この度ラオスで支援することとなった。産学官連携のこのプロジェクトで、ついにその活動範囲は世界規模の領域にまで広がった。

 

紆余曲折を経てここまで辿り着いた小森氏だが、最後にゴルフへの情熱を口にした。

 

「でもやっぱり、僕はゴルフ場を経営したいんですよね。どこか良いゴルフ場ないですかね?(笑)僕は根っからのゴルフバカですから」

 

また聞くと、閉鎖したコースに生えていたフェアウェイの芝は、全て近隣コースに無償で譲ったという。

 

「58ゴルフクラブはクローズしてしまいましたが、近隣のコースでは58で育った芝生が生きているんですよ。僕もそんなこんなで、芝生を譲ったコースでプレーする時は良くしてもらえるんですよね(笑)」

 

持続可能、win-winという言葉を地でいく小森氏。ビジネスでも、なんでも、自分たちだけが得をしてはならない。それに関わるみんながハッピーでなければ続かない。生きていく上で本当に大事なことを教えてもらえたような。そんな気分に浸りながら、せめてもとの思いで、帰りはエコモードの運転で帰路に着いた。

 

今回お話を伺わせて頂いた「58ロハスクラブ」のオーナー小森寿久氏

 

GDOが取り組む「ゴルフ菜園プロジェクト~みんなのバーディでアフリカに菜園をつくろう~」は、アフリカへの菜園つくりを支援するプロジェクト。ゴルフをプレーすることで菜園という形に変えて寄付。結果、二酸化炭素の排出減にも繋げている。こちらも皆様からの積極的なご参加をお待ちしている。

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