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子どもと地域、そして私たち自身のための「Special Day」は4年目に

ゴルフ場に響き渡る子どもたちの笑い声が、ひと足早い春の訪れを告げているようだ。直前までの雨予報がうそのように晴れ上がった3月8日(金)、茅ヶ崎市立浜須賀小の6年生138人が元気いっぱいGDO茅ヶ崎ゴルフリンクスに乗り込んできた。コロナ禍に始まった卒業イベント「Special Day」は4年目を迎え、子どもたちをコースへ迎え入れる普段閉ざされた裏門も“通い慣れた道”になりつつある。

子どもたちがゴルフ場を駆け回る

お楽しみは全員参加の鬼ごっこで始まった。GDOスタッフだけでなく、校長先生や担任の先生たちも鬼になって5分間、広大な芝生の上を駆け回る。ジュースで喉を潤したら、次はお待ちかねの自由時間だ。スナッグゴルフ、フットゴルフ、パッティング、そして大谷翔平選手から寄贈された野球グローブを使ったキャッチボールと、好きなエリアで好きなだけ遊んでいい。ゴミも石ころも落ちていない芝生のフリーエリアでは、ブリッジしたり、側転したり、寝転んだり、話し込んだりと、みんな思い思いに過ごしている。

だがよく見ると、目を輝かせているのは子どもだけではない。たしかにこのイベントはコロナ禍にできる地域貢献や助け合いという発想から生まれたが、私たちは決して一方的に“与えている”だけではない。この日、運営に参加したGDOスタッフは約40人。彼、彼女らは子どもたちから笑顔をもらい、子どもたちと無邪気に触れ合い、身体を動かす喜びを味わった。しかも“特権”はそれだけにとどまらない。

GDO代表の石坂信也

GDO代表の石坂信也が解説する。「元々ベンチャーとして始まったGDOは、仕事もイベントも部署や立場に関係なくみんな総出でやっていて、それはそれで良い側面がありました。こういうイベントは部署に関係なく、日頃は経理かもしれないし、倉庫で働いている人、店舗で働いている人たちが一緒になって交流できます。普段の仕事では全く外に出ない人たちも、ゴルフ場やゴルファーに触れられます。子どもたち、地域のために――が発端ですが、私たちにとっては社員教育、育成、そして気分転換にもなる、すごくやりがいもあるものだと思っています」

実際、GDOは今年から「イベント体感プログラム」として、これまでボランティアベースだったイベント運営を制度化した。企業が成長していく中で、社員同士のコミュニケーションをどう円滑に行うか? 企業理念や目指すべき方向をどう効率的に、いかに深く共有するか? ゴルフをプレーしない社員たちに、いかにゴルフをもっと身近に感じてもらうか? 対外的に価値あるイベントを企画・自主運営することで、これらの課題解決を目指しているのだ。

この日、イベント運営に参加したスタッフたちには様々な気づきもあった。普段は「キッズゴルフ by GDO」のコーチとして小中学生を指導する高杉青空は「ゴルフを始め立ての子は飛ばないし、いっぱい打っちゃうので9ホールも集中力が続かない。もっと楽しませてあげたいな」と課題を感じていたという。「だからきょうのイベントみたいに、例えば最初6ホールはゴルフをやって残り3ホールはフットゴルフくらいの方が離れていかないのかな」と新たな工夫を思いついた。

「私がいま行っているゴルフ場は台風で半壊して、使えないホールで撮影やイベントを受け入れているんです」と言うのは新卒1年目のゴルフ場営業、谷脇可奈子だ。ゴルフ場でゴルフ以外にどんなことができるのか? そのアイデアは現場で子どもたちが遊ぶ姿を見て想像から確信へと変わっていった。「ゴルフ場さんにきょうのイベントでやっていることをお話ししたいです!」と実体験で得た話の”ネタ”に胸を張った。

毎年恒例になっている風船飛ばし

子どもたちの思いを乗せた風船が青空に鮮やかな絵を描き、“特別な1日”はあっという間にお別れの時間となった。昨年に続いて短くなった鉛筆を寄付してくれた浜須賀小SDGs委員会の藤本幸助さんは「すごく楽しかったです。普段できない体験ができて、こういう機会はすごくうれしい」と満面の笑みで振り返った。歴史の本を読むのが好きという12歳だが「1回も入らなかったけどパターゴルフが面白かった。プロの選手ってすごく上手だなって思いました!」とちょっぴりゴルフの奥深さも味わってくれたようだ。

浜須賀小のSDGs委員会とGDO茅ヶ崎ゴルフリンクスの伊藤修武ゼネラルマネジャー

子どもたちを送り出し、静けさを取り戻したゴルフ場で、浜須賀小の青柳和富校長が残してくれた言葉を思い返した。「私が感動したのはスタッフの皆さんが本当にウエルカムな気持ちで迎えてくれたことです。その気持ちが伝わって、子どもたちも夢中になれたのかなと思います」。だけど、感謝されるべきなのは私たちだけではない。素敵な場を提供してくれた地域の小学校と子どもたちも、私たちの成長をあと押ししてくれているのだ。

<了>

写真・角田慎太郎 文・今岡涼太

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