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“オフ・コース・ゴルフ”に好機 GDO、ゴルフテック、スカイトラックの3社が目指す未来

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)は8月10日、米国子会社であるゴルフテック(GOLFTEC Enterprises, LLC)を通じて、一般ゴルファー向け弾道測定器でシェア1位を誇る「スカイトラック(SkyTrak)」の事業取得を発表した。その費用は6500万米ドル(約87.7億円)という規模で、8月31日に全ての手続きを完了した。

2021年度に過去最高益(売上高395億円、純利益10.3億円)を記録したGDOグループだが、この新たな投資が生み出す未来はいったいどんな姿なのか?GDO代表の石坂信也、ゴルフテック代表のジョー・アッセル、そしてスカイトラック事業の最高戦略責任者となったジェフ・フォスターが、そのビジョンを語った。



◆ゴルフマーケットの動向とGDOグループの方針

石坂信也:パンデミック以前から、トップゴルフ(Topgolf)をきっかけにした「ゴルフ+エンターテインメント」分野が、アメリカを中心に非常に拡大しています。これは大きな施設だけではなく、室内の小規模な空間においても同様で、さまざまなエンターテインメント手法が盛んに開発されています。同時にテクノロジーを駆使したゴルフ上達やゴルフの楽しみ方も増えています。

こうした分野に対して、我々はゴルフテックへの投資、さらにスカイトラックの事業取得を通じて、テクノロジーとエンターテインメントを駆使した新たなサービスを展開していきたいと思っています。

GDO グループとしては、既存事業の磨き上げによってしっかり利益を成長させるとともに、ゴルフ場以外でのゴルフ、アメリカでは“オフ・コース・ゴルフ”とも言われていますが、ここにすでに投資を行っています。日本ではトップトレーサー、アメリカではゴルフテックを通じて、今後ますますゴルフにおけるイノベーションを手掛けていき、単に既存事業を成長させるだけでなく、新しい需要を喚起していきたいと思っています。

◆ゴルフテックの現状と展望

ジョー・アッセル:こうしてみなさんに、世界1位のゴルフレッスン企業としてゴルフテックの事業を説明できることをうれしく思います。我々は2022年中に30店舗をオープンさせて、全世界で約250店舗となる見込みです。コーチは約1000人が在籍し、世界最大のPGAティーチングプロの雇用先になっています。2022年の総来店者数は19万人、総レッスン数は200万回に達するという予測です。

ゴルフテックのレッスン事業は拡大を続けている

我々の収益分野はレッスン、練習利用、クラブフィッティング、クラブ販売、そしてフランチャイズです。2022年のフランチャイズを含めた現金売り上げは約1億9000万ドル(約272億円/1ドル=143円換算)、当社単体では1億3000万ドルを超え、年平均成長率は23%と予測しています。

成長に関しても、素晴らしい伸びを経験しています。2023年には20カ所で新店舗をオープンする予定ですが、それでもなお拡大を続ける余地があります。米国内の店舗数は約210ですが、375まで増やせると考えます。米国外は約40ですが、400まで伸ばせると見積もっています。合計すると世界全体で約775店舗を展開できると考えていて、今後さらに500以上もの店舗をオープンできる余地があるのです。

ゴルフテックは、レッスン受講生の新規獲得と継続更新によって安定した売り上げを生み出しますが、その更新率は毎年約47%で安定しています。加えて、毎年新たな受講生が増えていくので、事業の見通しが非常に立てやすくなるのです。この基盤を使って将来に向けた事業への再投資を促せます。

◆スカイトラック事業の紹介

ジェフ・フォスター:スカイトラック、そしてゴルフテックの一員となれたことを光栄に思います。スカイトラックはここ数年、最も売れている弾道測定器であり、現在の利用者数は約6万人です。ボールデータを非常に正確に測定して表示するだけでなく、シミュレーションコースのプレーやスタッツの記録、ゲーム、友人と一緒にプレーするなど楽しみながら練習し、上達することができます。

コンパクトだが、その精度は高いスカイトラック

ご存知のようにここ数年、ゴルフはブームを迎えています。ゴルフテックとしてスカイトラック事業に魅力を感じることの1つが、オフ・コース・ゴルファーの増加です。オフ・コース・ゴルファーは2014年と比較して1000万人以上、別の言い方をすれば174%増加しており、両者のビジネスにとって大きな好機であることを示しています。

我々がいま特に取り組んでいるのは製品の改良です。新たなマーケティング戦略への投資も増やしています。ここ数カ月以内にいくつかの業務提携を発表することもできるでしょう。そして何より楽しみなのは、連携してリーダーシップを発揮することの機会です。スカイトラックから引き継いだ経営と、ゴルフテックを率いるジョー、それにGDOを率いるマイク(石坂)と連携することで、それぞれが持つリソースを有効活用し、ビジネスを成長させられるのです。GDOとは米国外の新たなマーケットも開拓していきます。スカイトラックとゴルフテックは、技術とデータを駆使して事業を成長させるという共通のビジョンを持っています。我々の前には大きなチャンスが広がっているのです。

◆「GOLFTEC Anywhere」構想がもたらす変革

ジェフ・フォスター:「GOLFTEC Anywhere」は私たちが取り組む土台となるテーマです。ゴルフ上達の世界クラスの体験を、店舗の対面レッスンでも、外出先のスマホでも、自宅に設置したシミュレーターでも、あらゆる場所に届けます。どこにいてもつながり、上達することができるのです。今まで以上に世界中の幅広い層のゴルファーをターゲットにします。ゴルフテックブランドをより普及させ、次世代のゴルフテックを築きたいのです。

近い将来、世界中どこに居てもゴルフテックのレッスンを受けられるようになる?

ジョー・アッセル:ゴルフテックの一流コーチ陣と実店舗、技術の歴史に、スカイトラックのデータが一つになれば、ゴルフ上達のレッスンだけでなく、多くの人々にエンターテインメントを届けることが可能になります。

スマホで撮影することでスイングデータが得られ、スカイトラックでボールデータを取得できます。これにより世界中のどこにいるゴルファーでも、ゴルフテックの最新技術とコーチングにより上達させることができます。有名コーチのレッスンやクラブフィッティングに加え、フィットネスやゲームまで提供できます。世界中のゴルファーに無限のコンテンツを届けられるようになるのです。これから共に歩んでいく未来にとても興奮しています。

<了>

◆石坂信也
成蹊大卒。ハーバード大MBA取得。三菱商事に10年間在職した後に独立し、2000年5月 (株)ゴルフダイジェスト・オンラインを設立。代表取締役社長就任。ゴルフ総合サービス企業として、ゴルフビジネスとITを組み合わせた事業モデルを積極的に推進している。

◆ジョー・アッセル(ゴルフテックCEO・共同創業者、PGAメンバー)
ミシシッピ州立大(MSU)出身。1995年に従業員1人、年間売上高9万ドルでスタートした会社を、2022年には年間売上高1億7500万ドルへと成長させた。ナショナル・ゴルフ・ファンデーション(NGF)理事、全米プロゴルフ協会の全国雇用委員、イノベーションファンド委員、チャリティ部門であるPGA REACHを歴任。2021年にGolf Incの「ゴルフ界で最も影響力ある25人」に選出され、同年PGAゴルフエグゼグティブ・オブ・ザ・イヤーに輝いた。

◆ジェフ・フォスター(ゴルフテック最高戦略責任者、スカイトラックCEO)
フロリダ州ポンテベドラ出身。オーガスタ州立大でゴルフ奨学生としてプレーしながら、広告の学士号を取得した。その後、短期間であったがプロゴルファーとしてプレー。前職はバッファローグループのプレジデントで、それ以前はゴルフチャンネルの上級副社長として、GolfNow、GolfAdvisor.comなどで構成されるデジタルビジネスを主導する重要な役割を果たしてきた。妻と3人の子どもとともにフロリダ州カレッジパークに住む。

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