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「ゴルファーだけでなく、誰もが集う場所に」。ゴルフ場に誕生した TREX OCEAN CAFE が目指す世界観

2021年7月15日、「GDO茅ヶ崎ゴルフリンクス」のクラブハウス2階に「TREX OCEAN CAFE」がオープンした。机と椅子だけだった休憩スペースに突如として誕生したこのカフェは、店舗プロデュースから街づくりまで一気通貫の開発プロジェクトを全国で数多く手掛けてきた入川スタイル&ホールディングス株式会社によるものだ。

ゴルフ場のレストランとは一線を画すスタイリッシュなカフェは今後、ゴルフ場や茅ヶ崎という街に何をもたらすだろう? 同社代表の入川ひでと氏に話を聞いた。

21年5月18日に名称変更した「GDO茅ヶ崎ゴルフリンクス」は、GDOが掲げるブランドスローガン「PLAY YOUR LIFE」を具現化するための場として、ゴルフだけではなく、それ以外の様々な取り組みも積極的に試行している。ゴルファーたちのお腹を満たすために、地元のキッチンカーに駆けつけてもらう独自のスタイルもあって、長らく、テーブルと椅子だけがある“休憩スペース”となっていたクラブハウス2階の活用も、その一つだ。

9月現在、クラブハウスの2階は、ビンテージ風のソファやテーブルが並ぶ誰でも入れるカフェとなり、昼食時は満席になることも珍しくないほどの評判を呼んでいる。大きな植栽を中心としたゆったりとした空間にはキッズコーナーもあり、来店客はほとんどがゴルフのプレー客ではなさそうだ。中にはペット連れの方もいて、さながら代官山や中目黒のカフェといった風情で、ゴルフ場のクラブハウスであることを忘れてしまいそうな光景が広がる。

2月にGDOによる5年間の運営が決まったことで、それまで手つかずにしていたクラブハウスの有効活用は課題としての優先順がグンと上がった。一般的にはゴルフ場施設利用者向けのレストランとして活用されることがほとんどだが、地域と結びつきながらゴルフ場のロケーションとしての価値を最大にすることをゴールにすると、見える景色は少し違ってくるはず。そんな模索をしているうちに、地元の方からの引き合わせもあり、入川スタイルと巡り会うことになった。

ではなぜ、ここがいわゆるクラブハウスのレストランではなく、誰でも入れるカフェになったのだろう? 自身もゴルフを楽しむ同社代表の入川氏に聞くと、そこには明快な答えがあった。

「このゴルフ場は広域避難場所になっていますし、GDOが地域と一体化した場所にしたいと聞いていました。そのためには、このゴルフ場は街にはなくてはならない存在である必要があります。私の仕事はカフェを通じてコミュニティを醸成させ、街づくりをすることです。カフェなら地域住民がペットを連れてくることもできるし、家族と食事もできるので、人々の生活が豊かになるのです。これは、普通のゴルフ場にあるレストランや、いわゆるイタリアンやフレンチのレストランでは難しいことです」。

東急東横線高架下「SUS」など、数々の店舗プロデュースなどで高い評価を得ている入川氏

こうした想いを持って「TREX OCEAN CAFE」は誕生した。オープンから1カ月以上が経過し、確かに取材日に広がっていた光景は、地域住民が家族や友人と食事を楽しんでいるように見える姿だった。日常で得ている実際の手応えはどうだろう?

GDO BASE CHIGASAKI ゼネラルマネジャーの伊藤修武は、オープン後の状況を次にように語る。「カフェのお客様は半分以上がローカルの方ですね。朝7時のオープンと同時に、ペットの犬と一緒に来店される方もいらっしゃいます。現時点ではゴルファーや地元住民の方々から、ポジティブに受け入れていただいていると思います」。

様々なトライアルを通じ、ゴルフ場の固定概念に風穴を開ける
GDO BASE CHIGASAKI ゼネラルマネジャーの伊藤修武

まずは順調な滑り出しと言ってよさそうだが、そこには店舗プロデュースからコミュニティ作りを多数手がけてきた「入川流」の秘訣がある。1957年にオープンした「GDO茅ヶ崎ゴルフリンクス」(旧茅ヶ崎ゴルフ倶楽部)は長い歴史を誇るゴルフ場だ。住宅地や学校に隣接し、日常生活との距離が極めて近く、古くから地元に愛されてきた自慢のゴルフ場という特殊な性質もある。地域の課題やニーズを見つけ出し、そのソリューションを提供するには、数々の成功事例を持つ同社のメソッドが心強かった。

「我々は、オープン前に周辺のリサーチを徹底的に行っており、ポイントは人、お店、街。どのような方が住んでいて、どんな暮らしぶりをしていて、周りにはどんなお店があるのかを調査します。フィールドワークで実際に現地を歩き、街の歴史や雰囲気、住民の趣向性も細かくチェックし、結果に基づいて、カフェのメニュー、デザイン、オペレーション、サービス内容を決めています。」(入川氏)。

「GDOのフレキシブルな企業風土と『GDO茅ヶ崎ゴルフリンクス』の特異性に可能性を感じた」と入川氏

「TREX OCEAN CAFE」は、こうした徹底した地域のリサーチを根拠に、「こういう場所が欲しかった」という地元のニーズに応える存在でありたいという思いで運営されている。入川氏は、これまで手掛けたカフェを単に食べ物や飲み物だけを提供する場所ではなく、「みんなが集まるコミュニティの場(Community Access For Everyone)」と表現し、その頭文字をとって「CAFE」としているが、地域の人々が多数訪れている姿を見れば、この「TREX OCEAN CAFE」も“Community Access For Everyone”としての役割を果たしつつあるのではないか、と手応えも湧いてくる。

ゴルフ場西側にあるかつての管理棟はコワーキングスペースとして生まれ変わる予定。
これも入川氏のプロデュース

今後の「TREX OCEAN CAFE」はどんな可能性を秘めているのか? すると入川氏はこのように答えてくれた。

「これまでゴルフ場は、ゴルファーだけがプレーする場所で、家族には無関係でした。しかし、『GDO茅ヶ崎ゴルフリンクス』は住宅地のど真ん中にあるので、地域住民の日常とともにあることが役割になると思っています。ペットの散歩で立ち寄る人がもっと増えるでしょうし、海岸沿いという土地柄、当然サーファーたちが過ごせる場所にもなれるし、自転車でフラッと来る人もいるでしょう。地域のハブとなり、海と住宅地に囲まれた特異性を生かした異文化コミュニケーションが生まれて、地元の人にとってはもっと自慢できるゴルフ場とカフェになる可能性を秘めています」。

そして伊藤も「ゴルフ場運営が生業ではないGDOがあえて運営を手掛けるわけですから、これまでにないゴルフ場の可能性を追求したいし、この『GDO茅ヶ崎ゴルフリンクス』は絶好の環境にあると思います」と語る。

ゴルフ場×カフェ。茅ヶ崎というロケーションだからこそ生まれたこの「TREX OCEAN CAFE」は、ゴルフ場に秘められた私たちがまだ知らないポテンシャルを見せてくれるはずだ。

PINGのオールドファンなら陶酔モノのセッティングは入川氏の私物。
「ココならこういうクラブでプレーしたいよね」

文・田村一人/写真・角田慎太郎/構成・PLAY YOUR LIFE編集部

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