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思春期の息子との共通言語が「ゴルフ」という家族の話

これからご紹介するのは、思春期の子どもを持つある家族の話です。自立を求めて葛藤するティーンエイジャーとどう向き合うか? 家庭の中でゴルフが果たす役割とは? キッズゴルフの高杉青空コーチも交えて、蓮見さんご一家にお話をうかがいました。

(左から)父・蓮見隆志さん、長女:杏梨さん、長男:弘貴くん、母・るり子さん

ゴルフとの出会い

小学校低学年で始めた野球は1番ショートで活躍した弘貴くん。「初めは楽しかったけど…」と下を向きます。「野球って朝早くからウォームアップがあったりして、面倒くさかったけど、やらないと怒られるから…」と、自分の意思とは無関係に強要される苦しさを感じて、小学校卒業と同時に野球からも卒業します。中学生となりバスケット部に入部しますが、休み時間はタブレットを観て過ごすマイペースな弘貴くんには、厳しい上下関係は性に合わず、これもすぐ辞めてしまいます。

一方で、弘貴くんの野球チームにスタッフとして参加していた父・隆志さんは、息子の卒業と同時にぽっかり時間が空きました。その頃、会社の先輩に誘われて行った打ちっ放し練習場で「うまい」とおだてられて、その気になります。「次はゴルフだ!」と帰り道に早速ショップに立ち寄ってアイアンセットを購入し、一気にのめり込んでいきました。

夏になり「一緒に野球をやっていたので、ゴルフも一緒に楽しめればいいな」と、隆志さんは弘貴くんをゴルフ練習に誘います。そこで、ちょっぴり意外な反応がありました。「弘貴の性格からすると、『打てよ』と言っても『もういいよ』みたいに言うかと思いきや、打席に入るとぜんぜん私に譲ってくれないくらい、ずっと打ち続けていましたね」と、すぐに熱中した様子なのです。

自分のペースで好きなように球を打てる。誰に指図されることもない。そして、見た目以上に難しいことも、弘貴くんの興味を刺激しました。「止まっている球だから簡単に打てると思ったら、ぜんぜん打てなかった」と振り返ります。「でも、綺麗に打ってみたいと思いました」と弘貴くん。家の近所にキッズゴルフがあることを知り、早速入会してみました。

ほろ苦くないコースデビュー?

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「初めてのレッスンで発したのは『はい』のひと言だけでした」と高杉コーチは思い出して苦笑します。「野球も本当にそうでした。まったく誰にも馴染まず、黙々とやる一匹狼的な感じ」と隆志さんも同調します。

それでも、弘貴くんにとってキッズゴルフの第一印象は「野球と違って怖くなさそう」というものでした。「1回、球に当たって楽しくなりました。うまく当たっていないけど、高さが出て、球が飛んだ」とゴルフの快感も知りました。母・るり子さんは「塾は嫌だって言うことも多かったですが、ゴルフは嫌がらず、楽しんで帰ってくることが多かったです」と証言します。

初めての試合は中2の夏。何も知らずに参加した合宿で、翌日に試合があると聞かされました。しかも、当日はみんなが観ている第1組でのスタートです。記念すべき1打目は、ティイングエリア脇の林に打ち込んでしまいます。「出し方とか全然分からなかったから、適当に打って出たと思ったら、また木で跳ね返って戻ったりして大変でした…」と、レディスティに行くまでに7打を要し、1番ホールだけで15打を叩きました。

しかし、ここで弘貴くんらしさが発揮されます。「大変だったけど、別に緊張はしなかったです」とあっけらかん。高杉コーチは「キッズゴルフから20人くらい参加しましたが、3位になった子の次くらいに良い顔をして戻ってきました」と笑います。「そんな顔してない」と弘貴くん。しかし、初試合が嫌な思い出にならなかったことは事実でした。

精神的な落ち着きはゴルフにおいて強みになります。高杉コーチはこんな出来事も覚えています。雨となった茅ヶ崎での練習ラウンド中、弘貴くんは途中まで自己ベストを狙える1オーバーで回っていました。だんだん雨脚が強くなり、みんなは引き上げようとしましたが、好スコアでプレーしている弘貴くんに「残ってやる?」と確認すると「いや、雨だから」とあっさりラウンドをキャンセルしました。良い意味でスコアに執着がないのです。「僕が何百人と見てきた中で、彼の強みは気持ちの平坦さです。練習もちゃんとやるので、アスリートとして輝いてくれるだろうなって思います」と高杉コーチは期待します。

思春期の息子との<共通言語>

父・隆志さんもゴルフの熱中度では負けていません。平日は出張もあって忙しいものの「先月までは月5、6ラウンド。2日連続もありました」と、週末になると早朝に起き出してゴルフ場に向かいます。ときどき、弘貴くんを誘いますが、早起きが苦手な弘貴くんには、あまりうれしい誘いではありません。「お父さんはめっちゃ早いスタート時間を予約するから、あまり行きたくないです。5時半に起きて、眠いけど連れていかれて車で寝ています。でもやっぱり一緒は無理です」ときっぱり。お父さんの名誉のために付け足すと「朝早くなければ一緒のラウンドは楽しい」そうです!

それでも、ゴルフは親子にとって共通の話題となっています。父が「今日どうだった?」と聞くと「普通」とひと言返ってきます。逆に父がラウンドから戻ってくると「どうだった?」と聞かれ「100を切れなかったわ」と答えると「ふーん」と短く反応します。「プライベートや学校のことは思春期もあって話してくれないので、ゴルフが架け橋になってくれています。ゴルフがなかったら一切会話がないんだろうなっていう怖さがありますね」と隆志さん。「共通言語があって良かったです笑」

音楽をたしなむ奥様の影響で、長女の杏梨さんは幼い頃から毎日バイオリンを弾いています。それでも以前、沖縄に旅行した際、一度だけ家族4人で一緒にゴルフをしたことがあるそうです。「いつもはやらないのですが、あの時はやりたいなって思いました。自然の中で、あんなにリラックスしたことはなかったです。すごく楽しかった」と、るり子さんは懐かしみます。いつかまた、家族4人でプレーする日が来るのでしょうか?

キッズゴルフが目指すのは、家庭の中にゴルフがある生活です。子どもからお年寄りまで、一緒にプレーできる数少ないスポーツであるゴルフが家族の潤滑油となって、豊かな人生の彩りとなってほしい。そんな私たちの理想像を、蓮見家に見た気がしました。

<了>

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KIDS GOLF by GDO(キッズゴルフ)

写真・文 PLAY YOUR LIFE編集部

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