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なぜ私たちは「スピードゴルフ」に感動したのか?

日本初開催の「スピードゴルフ世界選手権」が11月14日(木)、15日(金)の2日間、栃木県さくら市にあるセブンハンドレッドクラブで行われました。走りながらゴルフをするスピードゴルフは、気軽に「やってみよう!」とはならないのか、国内の競技人口は数百人ほど。日本スピードゴルフ協会を後援するGDOのスタッフも大会運営を手伝いましたが、最初はみんな「変わった趣味の人たちだな」と好奇の目で見ていたかもしれません。でも、大会が終わる頃には、その印象はガラリと変わってしまったのです。

日本初開催となった「スピードゴルフ世界選手権」

世界13カ国から集まった80選手を出迎えて、まず驚いたのはその肉体です。多くの選手がまるで陸上選手かラグビー選手のようにスリムで健康的にシェイプされ、ゴルフ場ではなかなかお目にかかれないアスリート体型をしています。じつに爽やかな印象なのです。

フランススピードゴルフ協会のヴァレリー・テクシエ会長はこう言います。「私たちの協会には女性が20%います。子育てで忙しくても、スピードゴルフなら1時間で18ホールを回れるし、健康的で、終わったら達成感があり、ゴルフのようにフラストレーションが溜まりません。女性にとっても非常に魅力的なスポーツなんですよ」。スピードゴルフという言葉に抵抗を感じないよう「時計に挑戦!」と銘打って、早歩きでもいいですよ!と呼びかけてイベントを開催することもあるそうです。

世界のスピードゴルファーたち

ティショットを終えるとすぐに走って次打地点に行き、素振りもせずに球を打ち、また走る。グリーン上では瞬時にラインを見定めパットする。全ての動きがよどみなくスムーズで、プレーは見ていて引き込まれます。

18ホールを約1時間で走ってきた(もちろんゴルフをしながら!)選手たちは、なんとか息を整えると、すぐに「アテスト」というスコアの確認・登録作業を行います。大会では各ホールにスタッフを配置して、選手たちはホールを終えるたびに自身のスコアを告げるという方法を採りましたが、そのスコアと自身の記憶(あまりメモする選手はいません)を正式に照らし合わせる作業です。

アテスト担当のスタッフは証言します。「自分が持っている気力と体力の全てを使い果たしてゴールした選手たちは、疲労困憊しつつも達成感のある表情がうかがえました。そして、そんな状態でも1打に対するこだわりが見え、スピードゴルフに対する真剣さを受け取りました」。プレーを終えた圧倒的な解放感の中、それでも1打にこだわって、記憶と違う数字はしっかり訂正を主張する。その情熱に心を動かされたと言います。

競技人口が少ないマイナースポーツならではの連帯感も、心温まるものがありました。選手がスタートするときにはみんなで盛り上げ、ハーフターンですれ違うときには拍手と歓声を送る、ホールアウトしたら笑顔で健闘をたたえ合う。9ホール最速プレーのギネス世界記録を持つルーク・ウィレットさん(英国)はスピードゴルフの魅力を「結果がどうであれ、18ホールを終えたら何かを成し遂げたと思えること」と言います。やるか、やらないかの違いだけ。もしあなたもスピードゴルフに挑戦するなら、たとえどんなスコア、どんなタイムで回ろうとも、18ホールを終えた時に同じような達成感と連帯感を得られるでしょう。

9ホール最速プレーのギネス世界記録を持つルーク・ウィレット選手
健闘を称え合う選手たち
世界のスピードゴルフファミリー

全競技が終わり、表彰式が始まるまでの間に、海外選手たちは声を掛け合い、グリーンにできたピッチマークを直すために再びコースに出ていきました。プレー中は急いでいるのでピッチマークを直す時間がないからです。誰の指示でもありません。それに、運営スタッフは多くの選手たちから「大会を支援してくれてありがとう」と何度も言葉を掛けられました。たとえ英語が分からなくても、表情や態度だけでも気持ちは十分伝わりました。

日常の中で、いつの間にか忘れてしまっていたものが、非日常のスピードゴルフにはありました。そこには、ゴルフをやるのは当たり前、お金を払っているのだから面倒を見てもらって当然、といった自己中心的な感覚はありません。自分たちが大好きなことをやらせてくれるゴルフ場や、支援してくれる人々への素直な感謝があふれていました。

私たちからも「ありがとう」を伝えたい

何事も当たり前ではないという、当たり前のこと。まだまだ、スピードゴルフがプレーできるゴルフ場も、プレーする人数も多くはありませんが、私たちもその小さな活動を支えている一員だということに、大きな誇りを感じた世界大会となりました。

<了>

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写真・文 PLAY YOUR LIFE編集部

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